年金分割について

「離婚したら相手の年金の半分を貰えるんでしょ?」

年金分割という制度をご存知の方でもこのような誤解をしている場合が多くあります。

目次

年金分割とは?

年金分割とは、簡単に言うと、夫婦が婚姻中に支払った厚生年金保険料や旧共済年金保険料を夫婦で分け合う制度です。

年金分割という制度を誤解しないためにおさえておきたいポイントは2つあります。

分割の対象は「結婚していた期間」

1つ目は、年金分割によって、年金保険料の分配が受けられるのは、結婚していた期間に対応する年金についてのみであるという点です。

つまり、結婚していた期間が10年間であれば、その10年間で支払った年金保険料に基づく年金についてのみ分割を受けられることになります。

基本的に厚生年金と旧共済年金のみ

2つ目は、年金分割の対象となるのは、基本的に厚生年金と旧共済年金のみであるという点です(「旧共済年金」と記載しているのは、2015年10月から公務員の共済年金が会社員と同じ厚生年金に一本化されたためです)。

つまり、相手が会社員(サラリーマン)であれば厚生年金保険料を支払っていたはずですので、その支払った分に基づく厚生年金の分割を受けることが可能です。

また、相手が公務員であれば2015年9月までは旧共済年金保険料、同年10月からは厚生年金保険料を支払っていたはずですので、その支払った分に基づく年金の分割を受けることができます。

相手が自営業の場合には、厚生年金保険料や共済年金保険料を支払っておらず、国民年金保険料しか支払っていないため、年金分割を受けることはできません。

また、企業年金や国民年金基金、厚生年金基金の積み立てを行っていた場合であっても、それらの年金については分割を受けることはできません。

年金はいつ受け取れるの?

年金分割を受けられる場合、離婚してすぐに年金を受け取れるというわけではありません

年金分割は、あくまで自分の年金受給者という資格のもとで年金の分割を受けるものですので、年金の分割を受ける方が年金を受け取る年齢(原則として65歳)になって初めて年金の分割を受けられます。

ただ、年金の分割を受ける方が長期にわたって年金保険料の不払いを生じさせてしまったなど、年金の受給資格を失ってしまった場合には、年金の分割を受けることはできなくなってしまいます。

年金分割の割合はどうなる?

年金分割には2種類ある

年金分割の割合はどのように決まるのでしょうか。

年金分割には、「3号分割」と「合意分割」という2つの種類があります。

3号分割

3号分割とは、第3号被保険者と呼ばれる方、つまり、会社員や公務員の被扶養配偶者(年収130万円未満の方)のための年金分割の制度です。

会社員や公務員の配偶者で専業主婦(主夫)をされていた方は、基本的に第3号被保険者になっているはずです。

そして、3号分割は、2008年4月から始まった制度ですので、2008年4月以降の結婚期間に対応する年金について、相手と話し合いをすることなく自分一人で年金事務所にて手続をするだけで2分の1の分割を受けることができます。

夫婦間で分割の割合などについて話し合いをし、合意をする必要がないという点が3号分割の特徴です。

合意分割

合意分割とは、3号分割の対象とはならないものの年金分割を行える場合の年金分割方法です。

合意分割という名の通り、夫婦間で分割の割合を合意しなければ年金分割を受けられないことになりますので、夫婦間の話し合いや裁判所における調停・審判で分割の割合を決めることになります。

では、夫婦共働きの場合には、年金分割の割合はどのように決めるのでしょうか。

夫婦共働きの場合

離婚におけるお金の問題

夫婦共働きの場合は、双方の年収が130万円以上であれば合意分割になりますので、基本的には夫婦で話し合って年金分割の割合を決めなければなりません。

ただ、夫婦ともに収入がある場合には、夫婦の収入割合にしたがって年金を分け合う合意をすることもあり得ますが、

実際には2分の1ずつで分け合う合意がなされることがほとんどです。
(裁判所における調停や審判では、9割以上のケースにおいて2分の1ずつで分け合うという結論で終了しているという統計があります)

年金分割の期間制限

なお、年金分割には期間制限があり、原則として離婚してから2年以内に年金事務所で手続をしないと、年金分割を受けることができなくなるので注意が必要です。

離婚の際に年金分割の手続をしている夫婦は、離婚した夫婦全体の1割程度と言われています。これは、年金分割という制度自体がまだまだ知られていないことが原因であると思います。

当事務所では、年金分割も含めた総合的なサポートを行っておりますので、まずはご相談いただければと思います。

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